高校生のみなさんへ

(2024年9月)

こんにちは!化学物理工学科のこのページの中の人です。
いままで(2024年になるまで)化学物理工学科の高校生向けのページって実はありませんでした。ただ、それだと高校生のみなさんに我々のやっていることや魅力が伝わらないのでは?ということで、このページが立ち上がることになりました。全部読むとちょっとした長文なので、興味があるところと、その前後あたりをご覧になってください!

目次

化学物理工学科ってどんな学科?

化学物理工学科というと「何をやるのかわからない」というイメージが多いようです。まず工学というのは聞いたことがある気がするけれども、いまいちよく意味が分からない…それもその通りだと思います。高校では化学や物理は習っても、工学とか理学とか、そういうのは教わりませんよね。

「工学」というのはざっくりいうと「社会の役に立てるための学問」と思ってもらって大丈夫です(*)。つまり、工学部自体が何かしらを「社会の役に立てるための学問を学ぶ学部」ということになり、化学物理工学科は「化学と物理を社会の役に立てるための学科」ということになります。じゃあ、どうやって役に立てるの?というところは後ほど解説します。

*「工学」とよく比較される学問は、「理学」で、これは「ものごとを突き詰める学問」と言えます。

化学物理工学科が化学・物理両方を扱う理由

次は、化学物理工学科ではなぜ、化学と物理の両方を扱うのか?について説明します。みなさんが今勉強している内容は、化学や物理、生物などに分かれていると思います。中の人が高校生のときも同じでした。一方で、社会を見てみると、化学や物理の両方がかかわっていることが実にたくさんあるんですね。例えば、お薬(医薬品)などは「化学」物質からできているわけですが、これを均一な品質を持つように生産しようとすると、そのための装置が必要になり、「物理」の知識が必要になります。電線や太陽電池を見てみても、電線が電気を運んだり、太陽電池から電気が生み出される仕組みは「物理」なわけですが、その物質は「化学」なわけです。

このように観察してみると、世の中で皆さんの役に立っているものの中には、化学・物理の両方が高いレベルで組み合わさっているものがたくさんあり、それが年々どんどん増えてきている状況になっています。でも、世の中では両方を高いレベルで学べる学科がまだない…化学物理工学は、そんな「化学」と「物理」両方の知識を必要とする「これからの社会の要請」に応えるために新しく設立された学科になります。

コラム:化学・物理とノーベル賞

ノーベル賞一つとっても化学と物理の境目は無くなりつつあります。2023年度受賞の「量子ドットの発見と合成」をご存知の人もいるかもしれません、量子ドットとは「とても光るナノ粒子」で、量子ドットが光る仕組みは、ごりごりの物理なわけですが、これを安定的に合成できる方法を発見したということで「ノーベル化学賞」が授与されています。

もう一つ、2019年度の「リチウムイオン電池の開発」も電池が電気を貯める仕組みは物理化学と呼ばれる学問ですが、リチウムイオン電池を安定して使える材料を開発したということで、「ノーベル化学賞」が授与されています。

逆に、2014年度の「青色LEDの開発」は、青色に発光するLEDの化学物質を発見したわけですが、発光の仕組みが物理ということで、「ノーベル物理学賞」が授与されています。このように、「化学」と「物理」の垣根はどんどんと下がってきています。ちなみに、化学物理工学科では、量子ドットリチウムイオン電池の研究もできます!

化学物理工学が社会の役に立つ例

次に、化学物理工学が実際にどうやって社会の役に立つのかをお話ししたいと思います。例えば例として、化学の方を社会に役に立てるというのは例えばどんなことなのか。例えば、みなさんが薬や飲料を安心して口にできたりと、みなさんが便利に生活できているのは「高品質」で「均一」な製品が「大量」に供給されているからなわけですが、実はこれは意外に簡単なことではないんですよね。

例えば、コップに水と食塩を入れて混ぜるくらいならなんてことないですが、じゃあ大量に作るということで、プールにざばっと食塩を入れて、均一に混ぜて下さい、となっただけで実は超大変になるわけです。他にも、蜂蜜みたいな粘っこいものを混ぜて均一にしなければならないとなると(例えばプラスチックとかを作るときはとても粘度が高いのですが)、これも実は超大変です。こんなときに、化学物理工学はどう攪拌すると効率よく均一にできるのか、を考える枠組みを提供します。攪拌に限らず、高品質なものを大量に均一に作るのに考えなくてはいけないことは他にもたくさんあり、それ自体もほんの一部で、たくさんのことを学びます(カリキュラムも参照)。

また、例えば環境問題などを考えてみると、化学物質が形態を変えながら(例えば炭素は石油中にもバイオマス中にも、またCO2としても存在するわけですが)地球全体を循環しており、物質の変換には化学、物質の循環には物理の知識が必要になります。エネルギー問題に関しても、ノーベル賞で述べた電池の話然り、太陽電池も仕組みは物理で、材料は化学ですし、ものを燃焼させてエネルギーを得る場合でも、燃焼は化学、エネルギーの取り扱いは物理と、化学と物理両方の素養が必要不可欠であり、世界中の環境・エネルギー問題を考えるには化学と物理の理解がとても大切になってきます。

化学工学,物理工学は就職ともとても相性が良い!

化学物理工学科は今年度初めて修士生が卒業の年度で、まだ就職実績は出そろっていないので今はご紹介できないのですが、その前身となる学科の一つである化学システム工学科(化学工学)などは、ほぼほぼ一部上場(とは最近は言わないらしいですが)の企業に就職しています(新学科は前身学科の就職をほぼ引き継ぎます)。ものは、たくさん作ることで儲けがでてくるわけですので、何かを「高品質に均一に大量生産」したいという会社は本当にたくさんあります(ちなみにたくさん作ると単価は安くなってみなさんの手元に届きやすくもなります)。

だから、その知識を持つ人はとても重宝されます。特に農工大自体も就職に強い大学なので、それもあいまって、(中の人がどちらかというと化学工学なのでそちらの話をしますが)農工大の化学工学系はもともと非常に就職に強い実績があり、機械系と同じくらいに強いとも言われます。今年度ちょっとずつ明らかになってきている化学物理工学科の就職実績も、漏れ聞くところによると、農工大×化学物理工学も相当就職に強く、しかも物理系と化学系両方の内定を取っている学生さんも少なからずいるようで、ここは自信を持って本学科をオススメできるところです。

旧学科の卒業生の就職先(2023年度以前の事例)

化学物理工学科のカリキュラム

さて、そのような化学物理工学科で化学と物理を学ぶために、どのようなカリキュラムになっているのか、説明したいと思います。

カリキュラムを見てみると(ちょっとたくさんあって見にくいのですが)、下から1年から4年生の順番になっていて、1~2年生では化学、物理、物理等の基礎的な科目を学びます(生物や地学も学べます)。2年生の後期になると、化学物理工学の中でも「化学工学」「物理工学」のいずれかのコースに進みます(それぞれ化学・物理を社会の役に立てるための学問)。どちらかに軸足をおき、より専門性を高める形になります。ちなみに、時間割が許す限り他コース履修も可能なので、両方ともがっつり勉強することも可能です。

そして3年生になるとどちらのコースでも「エネルギー」「環境」「新素材」の3つの「出口」を意識した科目パッケージの中から一つ以上を選んで学ぶことになり、このように2~3年生はそれぞれの興味に従って勉強内容を選ぶことができます。3年生の後期からは研究室に配属しながら卒業論文に取り組んでいくことになりますが、このとき、選んだ「コース」や「科目パッケージ」に依らず、全ての研究室(2024年度現在23研究室:研究室紹介のページを参照!)を選ぶ権利があり、興味に合った学習と研究を両立できるカリキュラムになっています。

基礎と応用を自由に学べ、出口も見据えたカリキュラム設計!

化学物理工学科に合う人はどんな人?

ということで、(1)化学と物理の両方が好きな方は、この学科が一番のおすすめとなりますが、カリキュラムを見ていただいて分かる通り、最終的には「化学(工学)」「物理(工学)」のどちらかに軸足をおいて勉強を進めることから、(2)今現在化学が好きで、物理は苦手なんだけど、その大事さはわかっているんだよね…という人や、逆に(2)今現在物理が好きで、化学は苦手だけど、まあ重要さは認める。といった人にも、ぴったりの学科だと言えます!

まとめ、化学物理工学科の魅力

以上をまとめると、化学物理工学科が化学と物理を社会の役に立てるための学問を学ぶところであること、化学と物理が合わさることで、たくさんの価値が生まれてきつつあること、農工大×化学工学,物理工学で就職にもとっても強いこと、好みに合わせて自由に学べるカリキュラムがあることを説明してきました。いかがでしょうか。是非化学物理工学科に魅力を感じてもらえるとありがたいです。ご不明点がありましたら、お気軽に下記の広報委員までご連絡ください!

東京農工大学化学物理工学科 2024年度広報委員 大橋 秀伯 ohashi @ go.tuat.ac.jp

化学物理工学科に入るため入試制度について

東京農工大学の工学部には大きく分けて4つの入試があります。①一般選抜(前期)44名程度、②一般選抜(後期)29名程度、③総合型選抜(SAIL入試)4名程度、④学校推薦型選抜(推薦入試)4名程度 の4つになります。国立大を志望される方は①、②については良くご存知かと思いますが、化学物理工学科の受験について少し補足しておくと、①前期、②後期とも、大学入学共通テストでは5教科7科目、理科は物理・化学の両方の受験が必要になります。

①前期の個別学力検査で3教科4科目で理科は物理・化学の両方の受験が必要になるのに対し、②後期の個別学力検査で3教科3科目、理科は物理もしくは化学のどちらか一方を選択して受験することになります。

③SAIL入試は、高校などで行った研究活動を、第一次選抜ではレポート(特別活動レポート)として評価し、続く第二次選抜ではプレゼンとして発表・質疑応答をしてもらい、それを評価する形式になります。高校で研究活動をしていなくても、夏のオープンキャンパスに合わせて行われる、化学物理工学科主催の「高校生のための体験教室」に参加して、その内容を使って出願することもできます(合格実績もあります)。9月上旬の出願になりますので、ご注意ください。

④の推薦入試は、個別学力検査を受けずに、大学入学共通テストと推薦書・調査書で合否が決定する形で、共通テストに関しては数学、理科、外国語を均等に評価します。現役生から一郎までが出願資格があります。