長津 雄一郎(反応流)Prof. Nagatsu (Reacting flow)

● 先生ご自身の研究内容について教えていただけますか。また、今後先生の研究が目指すところについてもお聞かせください。

化学反応を伴う流体力学(反応流とも呼ばれています)の研究を行っています。流体とは気体と液体のように“流れる”ことのできる物体の総称です。流体力学とは、その流れ(流動)に関する学問です。気体の反応流は燃焼に代表され、エンジンの開発等とも関連して、これまでに盛んに研究されています。私は、相対的に研究例が少ない液体の反応流(液相反応流と呼んでいる)の研究を行っています。この液相反応流は、近年ヨーロッパでは、Chemo-hydrodynamicsと呼ばれ、これに関する国際会議が初めて開催されたのが2009年という新しい学問領域です。この液相反応流は流体力学という物理分野と液相での化学反応という化学分野の融合研究です。私は自身が大学院修士課程学生の1998年から、この液相反応流の基礎研究を開始し、これまでに生成物分布が反応物濃度に大きく依存する液相反応流や化学反応による粘度変化を用いた流動の制御の事例を世界で初めて報告してきました。最近は、特に化学反応による流動制御の学理構築を目指した基礎研究と、その環境・エネルギー分野へ貢献を目指した応用研究に取り組んでいます。特に、応用研究として、化学反応による流動制御を利用した新規な石油増進回収法の創出に注力しています。

● 東京農工大学の学びの特徴はどのようなところだとお考えですか。

新学科、化学物理工学科は化学と物理の両方が学科名に存在する、現状、日本で唯一の学科です。様々な分野の種々のプロセスが複雑化、高度化する昨今では、化学と物理の両方を大学で学んだ人材に大いに活躍の場があると考えています。

● どのような学生に入学して欲しいとお考えでしょうか。

大学、大学院で学んだことを活かして、社会で活躍したい、社会に貢献したい、といった「志」を持った学生に入学してほしいです。

● 先生が学生に指導する際に心がけていることを教えていただけますでしょうか。

学部、大学院の講義では、教科書に沿った基礎に重点を置いた講義をすることを心がけています。一方、研究室では、研究成果を国際的な学術雑誌に掲載させることを目指して学生と研究に取り組むことが、学生が工学系のどの分野に進んでも必要と私が思っている能力(未知の課題の発掘し、解決する能力;論理的に説明する能力;それを日本語と英語で行う能力;それを他者と共同作業として進めてゆく能力)を育むことにつながると信じています。

● 先生はどのような学生を育てていきたいと考えていますでしょうか。

自分の人生は自らで切り拓く、自らの幸せを自分の手で掴みとる、そのために一生懸命、努力できる人になってほしいと思っています。

●この記事を読む受験生、高校生に向けて一言メッセージをお願いします。

農工大は受験時の偏差値ランキングと比べると、卒業時または大学院修了時の企業(産業界)からの評価ランキングは、はるかに高いことがしばしば報告されています。これは、教育・研究に真摯に誠実に取り組む農工大教員と共に、学部での勉学、研究室での研究に取り組む経験が学生の産業界で活躍できるための能力を高めていることがその原因と個人的に思っています。皆さんも、農工大で実力をつけ、皆さんの希望の進路をつかみませんか。


長津 雄一郎 (NAGATSU, Yuichiro)

Interview: 2018/8/2

 

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